「物言いを己が相撲に付けた人」という川柳を笑って済ませられない。横綱が前代未聞の傲慢の中に落ち込んだ。これを問題にすることもせず日本の国技である伝統が風前の灯と化す懸念はないのか。格闘技である以上勝敗の結果だけを注目視するのに異論はない。しかしこれは日本文化ではない。負けるが勝ち、いさぎよい勝ちでなければ負けと同じという日本は美しい国なのだ▼剣道の教えに「勝つに法あり、負けるに理あり」がある。勝っても負けてもその理法に合ったやり方をせよということで、無理無法の盲目剣はいけないという戒めだ。横綱の品格、品性を求めるのは、ある特定の世界、この場合相撲界だけにとどまらない。ノブレスオブリージュ(noblesse oblige)とは「高貴なる者に伴う義務」。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある。欧米社会における基本的な道徳観である。フランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならぬ」は武士道に通ずる▼日本相撲の品格、品位の相撲道を保つためにも、白鵬に猛省を勧めたい。自ら利を推薦する人に誰が称賛の声を上げるだろうか。
著者紹介

- 聖書と日本フォーラム会長。聖書日本キリスト教会・登茂山の家の教会牧師。三重県志摩市在住。
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